対岸の集落

2019年8月9日 エッセイ
実家のある村の対岸に、崖に貼りつくようにして存在する集落がある。

そこと僕の育った村の間には、先人に“暴れ川”と評された川が流れていて、その集落へは上流か下流の橋を渡って行くしかない。

その集落への道も細いのが1本だけで、崖崩れや落石があると通行止めになる。つまり、上下ともそうなると孤立してしまう。

僕の住んでた村から対岸の集落が見えるのだが、中学生になるまでそこに行ってみたことはなかった。

家族も、村の人々も、対岸にある集落のことを口にしない。
だからある日、友人たちとコッソリその集落に“潜入”した。

まず受けたのは、「余所者」に対する警戒というか「不審」の目だった。それがずっと追いかけてくる。

さすがに僕らは「ここはヤバイ!」と感じて、自転車から降りずに集落のメインストリートを通ってそこから逃げ出した。

後に知ったことだが、その集落は“ワケあり”な人々が集まり住んでいる場所らしかった。

ちなみに、そこの上流にある村にはナントカ(忘れた)という武士の一族が落ち延びてきたらしく、同級生にはその末裔と言われる子がいたのだが、件の集落の人々はそれとは別の人種だとか。


リアル「近くて遠い村」の話。



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